JES2012 症例の一年後の経過報告書

症例1は間歇性跛行300mの症例です。責任病変は左CIAのCTO病変で術前CTではLow densityの血栓性閉塞と判断していました。しかしながらCTO突破は困難でbidirectionalアプローチを試みましたが、subintimalから真腔へガイドワイヤが通りませんでした。さまざまなガイドワイヤ、カテーテルを使用し、intimal 一層でランデブーという状態に持ち込みました。最後はOrbit 2mmを血流に乗せて誘導するいわゆる「ヨット部作戦」を試みたところ、うまくantegradeの偽腔からretrogradeの真腔へ通すことができました。右CIAにも病変があり、plaque shiftの予防のためLuminexx 10-30mmとLuminexx 8-30mmにてkissing stentを行いました。さらに解離した左EIAにLuminexx 8-60mmを挿入し手術を終了しました。術後のABIは左0.59が0.95と著明に改善し、下肢症状も消失し、現在外来で経過観察中です。CTOは一見簡単そうに見えても時に難渋することがありその怖さを再認識した症例でした。もともとはJESの時間調整のためにいれた症例ですがここで時間がかかってしまいました。

Case report 1

症例2-5は奇しくも今回のJESでのハイライト症例となりました。77歳男性で2012年に排尿障害・腹痛で他院泌尿器科受診し、その際に施行したCTにて弓部大動脈瘤・腹部大動脈瘤を指摘され、当科受診となりました。瘤径が弓部大動脈瘤は60mm・腹部大動脈瘤は60mmのため、今回手術となりました。弓部大動脈瘤に対しては動脈瘤が頚部分枝を巻き込んでいるためdouble chimny法を予定し、両鼠径カットダウン・両側総頚動脈カットダウン・両上腕穿刺を行いました。まず胸部下行大動脈から末梢のTAGをdeployし、その中枢に、上行大動脈まで鼠径からはTAGを、両総頚動脈からExcluder legを挿入しました。TAGをdeploy後、左総頚動脈・腕頭動脈の順でExcluder legをdeployしました。頸動脈のステントグラフトのtouch up及を行った直後から、血圧測定不可・脈拍低下を認め、心臓マッサージを開始しました。心エコーにて心タンポナーデは否定的で、左鼠頚部からPCPSを挿入し、体外循環を確立いたしました。その後自己心拍再開したため、原因検索のため冠動脈造影を施行しましたが有意な冠動脈病変は認めませんでした。経食道エコー施行したところ、上行大動脈解離を認めました。当院心臓外科にて緊急手術予定となり、両頚部のシースを抜去し閉創している間に、出血傾向は進行・血圧低下・腹部膨満を認めてきました。そのため上行置換の適応はないと判断し、創部を閉創後、集中治療室に入室となりました。集中治療室に入室してから様々な延命治療を行いましたが、約三時間後に死亡確認となりました。

この症例までに約40例程度に同様のchimney法を用いた弓部大動脈瘤を治療しておりますが、軽度の脳梗塞が1例のみで、今回初めて重篤な合併症を伴いました。原因としてはこの症例は解離ベースの動脈瘤であり、ワイヤ操作やデバイス挿入により上行解離を起こし、その影響で腹部大動脈瘤破裂を引き起こしたのではないかと考えております。今回のJESでは再度この症例についてもdiscussionを予定しておりますので是非忌憚のない意見交換ができたらと思います。

Case report 2-5

症例6は右腎動脈狭窄症の症例です。72歳男性で、診断は右腎動脈狭窄症、CKD(片腎症例)の患者です。2年前より腎機能障害のため近医でフォローされていましたが、2011年2月に腎機能悪化のため精査目的で当院受診し、2011年11月に血管造影を施行しました。右腎動脈は50%狭窄、クレアチニン1.9mg/dl、血圧のコントロールも良好であったため、経過観察としました(左腎動脈はもともと閉塞しており、高度萎縮しています)。2012年6月にクレアチニンが3台まで上昇し、血圧のコントロールも不良となり(降圧剤2剤内服中)、超音波所見ではVmax2.6(m/s)と上昇傾向であっため、腎血管性高血圧治療と唯一の腎臓保護・萎縮予防を目的にステント術を予定しました。手術は右腎動脈にExpress SD 6-15mmを留置しました。術後1年が経過しましたが、血圧は降圧剤2剤のままでコントロール良好であり、クレアチニンは3台のまま推移しており、悪化を認めておりません。また超音波所見ではVmax1.2(m/s)と流速の改善を認めており、術後経過は良好です。腎動脈ステントの適応についてはまだ議論のあるところですがこういった片腎の腎動脈狭窄症においてはこのように名実ともに命のステントとなる場合があります。

Case report 6

症例7は82歳の男性で、2012年にかかりつけ医で施行したレントゲン検査で異常を指摘され、その後のCT検査で胸部大動脈瘤と診断された症例です。動脈瘤は胸部下行を中心に径6.1cm×5.9cmの嚢状動脈瘤であり今回治療目的で紹介となりました。アクセス血管は良好で、当時進行中であったZTLP治験のエントリーとなりました。ZTLPはlow profileとなったTX2の次世代ステントグラフトで本邦初公開のデバイスでした。今回使用する予定であったステントグラフトは18Frでしたので、局所麻酔下で経皮的に行うこととしました。まずメインデバイスを挿入する右大腿動脈にPerclose ProGlide ATにて前もって糸をかけておいてデバイスを挿入しました。シースはHydrophilicコーティングがされており挿入は非常にスムーズで、至適位置を確認しデバイスを留置しました。造影ではエンドリークは認めず、デバイス抜去後の止血も良好でした。経過は良好で、鼠径部出血や対麻痺などの合併症もなく術後2日目に退院となりました。1年後の経過も良好で、瘤径の変化はなく、明らかなエンドリークなどは認めておりません。このZTLP治験は私が力を注いでいる日米同時治験の一つであり、慈恵医大では20例のエントリーの予定でしたが、さらに7例を追加した27例の症例を行いました。日米でZTLP治験の症例エントリーはすべて終了しており、今後は胸部大動脈瘤もよりlow profileのステントグラフトによる治療が可能となると思います。

Case report 7

症例8は70歳男性で腹部大動脈瘤(AAA:50×53mm)に対してEVARを行った症例です。2011年に健康診断の腹部超音波検査でAAAを指摘され当科紹介受診となりました。初診時の動脈瘤最大短径は44mmであったために経過観察を開始されました。その後瘤径増大し、2012年に施行したCTにて最大瘤径50×53mmと増大を認めたためEVAR施行となりました。手術は局所麻酔下に両側大腿動脈を穿刺して行いました。アクセス血管である腸骨動脈に強い屈曲を伴う難症例でしたが、使用した最新型ステントグラフトXは外径14Frとlow profileであり非常に追従性が高く、まったく抵抗なく血管に追従しデバイス留置に成功しました。またlow profileのためヘパリン非使用でEVARを行い、術中の最終造影でtypeⅡエンドリークの所見を認めましたが血栓化に期待し経過観察とする方針としました。止血デバイスを使用してカテーテル抜去し手術を終了しました。術後経過は良好で第2病日に独歩退院となりました。術後1年でのfollow up CTでは、IMA経由のtypeⅡエンドリークを認めますが明らかな動脈瘤径増大を認めず経過良好で、今後も引き続き経過観察を継続する方針となっています。

このステントグラフトXも日米共同治験の一つで、開発には私が多く関わっておりGlobal PIにも名を連ねております。このステントグラフトが上市された際は腹部大動脈瘤に対するステントグラフトはすべて局所麻酔で可能となるかもしれません。

Case report 8

症例9-11は73歳男性で2005年に検診にて傍腎動脈型腹部大動脈瘤を指摘され、近医で経過観察となっていましたが、2012年瘤径が60mmと増大したため当科紹介受診となった患者さんです。早期胃癌も同時に見つかっており、まず低侵襲であるEVARを行うことが適切と考えました。中枢側のneckが6mmと短く、landing zone確保のため、double snorkel法を用いたEVARを施行する方針としました。この症例はJESでは時間の都合上お見せすることが出来ませんでしたが、傍腎動脈型の動脈瘤に対して簡便にでき、多くの症例に対して行っております。手術は全身麻酔下に両側鼠径部をカットダウンし、両側上腕動脈に5Frのguidingシースを挿入しました。両上腕から0.018 inchワイヤを使用して両側腎動脈へカニュレーションし、Express SDを腎動脈内まで進めました。同時にExcluderのmain bodyを指摘位置に留置しExpress SDを先にdeploymentしballooningしたままの状態でステントグラフトを展開しました。TypeⅠaエンドリークを認めたため、Aortic Extenderを中枢側に追加しそれに合わせて両側腎動脈にもExpress SDを追加し延長することでエンドリークは消失しました。経過は概ね順調で、術後6日目に退院し3週間後に早期胃癌に対してESDを施行されております。半年後のフォローで右の腎動脈の閉塞が疑われ血管造影を施行しましたが、右腎動脈は完全に閉塞しており再開通はできませんでした。幸いなことにクレアチニンの上昇は認めておらず、1年後の検査では動脈瘤の増大はなくエンドリークも認めておりません。ESD前後で抗血小板剤が中止されたことも腎動脈ステントが閉塞したことの一因かもしれません。

Case report 9-11

症例12は33歳の女性で右下肢静脈瘤(GSV type・CEAP分類C2)の患者さんです。症候性の右下肢大伏在静脈型の下肢静脈瘤で、血管内レーザー焼灼術(EVLA)と下腿瘤切除(stab avulsion法)を一期的に施行した症例です。もともと2007年から右下腿に腫脹感と痒みを自覚し、2012年に他院を受診したところ右下肢静脈瘤の診断で自費診療のレーザー治療を勧められた経緯がありました。治療費が高額であったことからセカンドオピニオン目的に当院を受診され、当院での下肢超音波検査でも上記診断に至ったために保険診療でEVLAを行うこととなりました。手術は局所麻酔下に日帰りで行い、手術時間は一期的な瘤切除を含めて36分と短く、特に問題なく終了しました。術後経過も良好で皮下血腫や疼痛症状をほとんど認めず、術前に認められていた下腿の腫れぼったい感じや痒みなどの症状は消失しました。またfollow upの下肢echo検査でEHITやDVTなどの合併症を認めないことを確認し、現在は1年間に1度のfollow upの方針となっています。伏在静脈のレーザー焼灼と同時に瘤を切除することで美容上の満足が得られやすく血栓性静脈炎も少ないと考えております。

Case report 12

症例13は、47歳の男性で閉塞性動脈硬化症の症例でした。2011年9月頃より、左下肢の間歇性跛行(150m)が出現し、近医の循環器内科でEVTが施行されましたが、左CIAのCTO病変のlesion crossができず、治療せずに退院となりました。途方に暮れていたところ、叔父が当科で治療をうけたことから、血管内治療の可能性を求めて当科を受診したという経緯のある患者さんです。2012年5月に左CIAのCTO病変に対して、Luminexxステントをさっと留置しました。術後のABIは0.46から0.74と改善しました。左下肢の治療成功後、右の跛行症状が顕在化したため、今回は右SFAのCTO病変に対して手術予定となりました。

まず、左総大腿動脈を穿刺にて腸骨動脈造影を施行したところ、前回の左CIAステントが少しAorta内にはみ出ているため山越えを行わず、右総大腿動脈を順行性に穿刺しました。造影では病変長は狭窄部も合わせると18cmにも及びました。SFA根部には軽度解離がありましたので慎重にワイヤを真腔へすすめ、KMP+CXi+0.018または0.014ワイヤでCTOの突破を試みましたがsubintimalに進み膝窩動脈で真腔に戻ることが出来ませんでした。ここで会場の先生からの勧めもありbidirectionalアプローチとし、石灰化した膝窩動脈を逆行性に穿刺し0.018インチワイヤーを挿入しました。

中枢側からのワイヤと重なる場所でSterling 4-20mmのバルンを用いてCART法を行いましたが同じlumenに戻すことに難渋しました。結局、膝窩動脈を逆行性に穿刺したワイヤから4Frシースを挿入しKMP+CXi+Xtreamの組み合わせでCTOを突破しました。このワイヤを大腿動脈のシースからスネアにてcatchし、pull-throughとした後に中枢からワイヤを入れ替えました。まずSterling4-10mmバルンにて病変部の前拡張を行い、Viabahnを末梢から5-50mm、6-250mmを挿入しました。少し残存狭窄が残りましたが造影剤のwash outは良好で手技を終了しました。術後経過は順調で跛行症状は消失し退院しましたが、2013年5月にViabahnの血栓閉塞が認められ血栓除去を施行しております。この際に使用したViabahnはヘパリンコーティングされていないプロトタイプのものであったことが原因と思われます。血栓除去後は経過良好で、現在跛行症状は認めておりません。

Case report 13

症例14は71歳の男性で右内頸動脈狭窄症の患者さんです。この患者さんは2010年、左頸動脈狭窄に対して、当院にてCEA施行を施行しており、術後経過観察中、右内頚動脈狭窄の進行が認められ今回手術となりました。もともとは病変の末梢がC3下縁であり慈大式CEAを予定しておりましたが、頸椎症が悪化し、手の痺れも出現し、後屈不能となったことから頸動脈ステント留置術を選択しました。究極のProtection device であるFlow reversalシステムを用いて治療予定としました。

右のCFAにProGlide ATを使用し7Frシースを挿入し血管造影を行うと、Type 3 ArchでありAmplatz super stiff wireが追従できないためFlow reversalは中止しました。6FrのDestinationにシースを変更し、Filter wireでlesion crossを行いました。Aviator 4-40mmバルンで前拡張したのち、Carotidwall 8-21mmを留置しました。回収したFilterには明らかな微小プラークは認めませんでした。術中、術後に脳梗塞は認めず、過潅流症候群も認めず術後3日目に経過良好のため退院となっています。その後の検査でもステントの狭窄や脳梗塞の所見もなく経過良好です。現在はFlow reversalと同様のMOMAシステムがMedtronic社より保険償還されており、私たちも頸動脈狭窄症に対するステント術の多くはMOMAへ取って代わっております。

Case report 14

症例15は毎年好評の慈大式CEAの症例です。症例は69歳男性で左内頚動脈狭窄症の患者です。2006年6月にめまい・呂律障害、8月に左同名半盲が出現し、他院での超音波検査で頸動脈狭窄症を指摘されfollowされていましたが、狭窄率の進行を認め当科紹介となりました。CTAにて左内頚動脈に高度狭窄を認め、病変上縁はC3下縁でした。超音波所見ではVmax3.2(m/s)と流速の上昇を認め、CASを行う言い訳がないので慈大式CEAを予定しました。慈大式CEAは小切開で頸動脈を露出し、頸動脈遮断を行うまでICAをさわらずに、内膜剥離はeversion法で行う術式で現在まで100例以上に施行し、術中脳梗塞ゼロを実現しております。おなじみの3cmの世界最小の皮切でICA、ECA、CCAを剥離し、CCA、ECAを遮断したのちにはじめてICAを剥離しました。その後ICAを離断しeversion法でプラークを除去し、ICAとCCAを吻合しました。頸動脈遮断時間も26分でシャントチューブも使用しませんでした。術後脳梗塞を認めず、術後5日目に退院しました。術後1年が経過しましたが、超音波所見ではVmax1.0(m/s)と流速の改善を認めており、現在も脳梗塞および再狭窄は認めず経過は良好です。この慈大式CEAがスタンダードとなることを期待します。

Case report 15

症例16は2009年JESに両側iliacステント、2010年JESに左SFAステントを留置した症例です。3度目のJESとなる今回は左間歇性跛行が100mとなり手術となりました。2010年に左SFAに留置したMISAGOステントの再狭窄が責任病変と考えられ手術の運びとなりましたが、血管造影ではステント内狭窄は50%ほどで、末梢側に50-90%のびまん性な狭窄を認めました。この病変をステントで治療すると、病変長が長いことから再狭窄のリスクが高いこと、将来のバイパス吻合部として使えなくなるなどの点を考慮し、保険未承認デバイスではありますが、Silver Hawk®を使用したアテレクトミーを行いました。末梢protectionにはFilterwireを使用し、無数のプラークをcatchしました。術後のABIは0.45から0.79と著明に改善し、下肢症状も改善しました。経過は良好で、1年後の経過でも1000m程度は問題なく歩行可能です。Silver Hawk®は未承認ですが、今後は上市を目指しております。

Case report 16

症例17-18は78歳の男性で、2009年4月に他院にて右気胸に対してVATSでのブラ切除を施行され、その後のフォローCT検査にてTAAを指摘された患者さんです。TAAは遠位弓部にあり、左鎖骨下動脈分岐直後から瘤化しており60mmの大きさでした。そのため、遠位弓部瘤にもピッタリフィットのTX2 ProForm治療を行う方針としました。

左上腕動脈、左総頸動脈、左総大腿動脈を穿刺、右総大腿動脈をカットダウンにて露出しました。造影では中枢のlanding zoneが短く、CCAをカバーした場合を考え、CCAにprotectionワイヤを挿入しました。VAは交通を認めておりましたので、左CCAのwireを目標に左SCAをカバーする形でステントグラフトの留置を試みましたが、ステントグラフトの中枢が瘤内に落ち込んでしまい、追加コンポーネントを挿入しました。同時に一部がCCAカバーとなったため順行性血流確保のため左CCAにExpress LD 7-37mmを留置しました。造影にてエンドリークのないこと、右VAから左VAを経て左SCAが造影されることを確認しました。左SCA起始部は完全にステントグラフトにてシールされていたためtype2エンドリークの懸念はないためコイル塞栓は行いませんでした。術後脳梗塞の合併もなく術後第4病日に退院となりました。退院後経過も良好であり、1年後のフォローアップCTでは瘤径は42mmと瘤はほぼ消失しております。

Case report 17-18

症例19-21は73歳の男性で心房細動のフォローアップ時の心エコーにて、TAAを指摘され、また精査にてAAA、右CIAAも認めたため治療目的で当院紹介となりました。手術は、遠位弓部瘤にも対応できるValiantとbest of both worldsのEndurantを使用して行うこととしました。

両鼠径をカットダウンし大腿動脈を露出し、左右の上腕動脈を穿刺し、左大腿動脈よりValiantステントグラフトを挿入しました。Zone 2に留置を予定していましたが、landing zoneが短く左CCAをややカバーする形で留置しました。Bird’s beakは認められないものの、左CCAを約70%カバーしたため、追加でCCAにchimneyステントを留置することとしました。先の症例ではCCAからダイレクトにステントを留置しましたが、この症例では右CFAよりVTKを挿入し、左CCAにcannulationしたのち7Fr Shuttleシースの先端をCCA起始部に留置しました。Express LD 10-25mmを留置し、脳血流を確保し、次に左SCAにコイル塞栓を行いました。造影では明らかなエンドリークを認めませんでした。

次いでAAA、右CIAAに対しEndurantステントグラフトによる治療を行いました。右CIAAは40mmと瘤化していましたが、IIA分岐直前でシール可能と判断しIIAコイル塞栓は行わず、末梢径28mmのデバイスを留置する方針としました。このように末梢径が太いものにも対応可能なのがEndurantの利点でもあります。留置後、造影では軽度typeIVエンドリークを認めましたが、腹部の拍動が減少しているため、手術を終了しました。みなさんもご存じのとおりEndurantではほとんどの症例でtypeIVエンドリークを認めます。術後経過は順調で、1年後のCTでは胸部・腹部ともにエンドリークは認めておりません。

Case report 19-21

症例22-25では万を持しての枝付きステントグラフトの登場です。症例は2004年に大動脈解離(Stanford A)を発症し緊急上行hemiarch置換術がなされ、2008年に大動脈解離(Stanford B)を発症し、その際に弓部大動脈の人工血管中枢側吻合部瘤と胸腹部大動脈瘤を指摘されたという経緯の症例です。弓部大動脈の人工血管吻合部瘤に対しては、2011年5月に再開胸での上行大動脈置換術が行われました。そして残存する胸腹部大動脈瘤が57×61mmと増大を認めたため、枝付きステントグラフトによる治療を希望され当科紹介となりました。手術では右鼠径部と左腋窩をカットダウンし、CFAと腋窩動脈を露出しました。このT-branchステントグラフトはメインボディをCFAから挿入し、分枝再建は腋窩動脈から行います。ステントグラフト挿入に先行し、まず腹部内臓分枝の選択的血管造影を行いました。造影では腹腔動脈起始部に既知の高度狭窄(99%)を認め、またSMAには狭窄所見を認めませんでした。造影上ではGDAを介したSMA-腹腔動脈間の交通ははっきりと認められませんでしたが、腹腔動脈起始部に高度狭窄を認めたことや、門脈血流があることから腹腔動脈はステントグラフトによるcover可能と判断し手術を行いました。まずCustom madeの3 branch付きステントグラフトメインボディをCFAより挿入し、マーカーをもとに至適位置で留置しました。その後、腋窩動脈からカテーテルを用いてSMA/両側腎動脈にそれぞれcannulationし、小口径カバードステント(Fluency)を使用して分枝血管再建を行いました。術後造影ではtypeIVエンドリークの所見を認めましたが血栓化するものと判断し手術を終了しました。術後経過は良好で、ステントグラフトによる大動脈cover範囲が長い症例のため術後一過性に下肢脱力症状を認めましたが、脳脊髄液ドレナージやその他全身管理により症状は速やかに改善し、術後21日目に独歩退院となりました。その後の外来通院中の経過は良好で、術後1年目のフォローCTでは明らかなエンドリークを認めず瘤径増大なし、また腹腔動脈末梢血流はSMAを経由して流れていることを確認できました。

このデバイスの優れている点は完全なcustom madeである必要がないこと、メインボディのウェスト部分が細くなっており完全にdeployしても臓器虚血とはならないこと、メインボディを留置し、腋窩動脈から分枝を完成させることから、メインボディを留置したのちにCFAを完全に閉じることが可能で、これにより下肢虚血が短時間ですみ、大口径シースの長時間留置による術後下肢コンパートメント症候群が起きにくい点が挙げられます、またデバイスにsleeveが予め付いていることからtypeIIIエンドリークが起きにくいことも利点と言えます。今後もデバイスの改良がすすみ上行大動脈以外はすべてステントグラフトによる治療が可能となっていくでしょう。

Case report 22-25

最後の症例26は77歳女性で2011年11月に健診で施行したCTにて右腎動脈瘤を指摘され、その後当科外来を受診した患者さんです。局所麻酔にて左上腕動脈にシース挿入後5Fr Destinationを挿入し、ノンテーパーアングルカテーテルで腎動脈を選択的造影しました。動脈瘤はwide neckであったため、まずDestinationを腎動脈にcannulationしThruwayワイヤ下にExpressSD 4-15mmを動脈瘤の開口部に留置しましparent vesselを確保しました。その後ステントをアンカーとして、Orbitコイルを挿入しました。造影にて瘤がコイルでpackingされ、末梢の腎血流も問題ない事を確認し手術終了となりました。術後経過問題なく、術後2日目に退院となりました。1年後の経過でも腎動脈の血流は良好で、動脈瘤は空置されております。

Case report 26

Japan Endovascular Symposium研究会

実行委員長 大 木 隆 生