実行委員長メッセージ

第21回 Japan Endovascular Symposium 開催にあたって

JES 2026 実行委員長 大木 隆生

本年8月21日(金)、22日(土)、23日(日)に完全オンライン形式で血管病の最先端を討議するJESを開催します。私が米国から帰国した2006年に始めたJESは今年で第21回目となります。
私が12年間の米国での活動を終え帰国した2006年にJESを立ち上げましたが、その時の狙いと信念は2つありました。1つは特に血管内治療で立ち遅れていた日本の現状を憂いブースト効果、テコ入れをしたいと願ったことです。それと米国で自分が億を超える給料をもらっていたにもかかわらず、日本では800万円の年収を提示され、改めて日本の勤務医の劣悪な労働条件を憂いた事からせめて参加費は日本一安い学会にしたいとの願いです。前者に関しては「論より証拠」でデータや統計よりも臨場感のある、そして嘘偽りのないありのままのライブサージェリーで当時未承認だった大動脈瘤ステントグラフトを始め、最新の血管内治療デバイスとその威力を供覧する構成としました。実際、最初の10年間は2日間で20例を超えるライブを供覧し続けました。しかもそのうち半数近くは本邦初公開という意欲的かつ今から振り返ると覚悟と無邪気さの同居した症例ばかりでした。しかしその後ライブサージェリーに対する逆風が吹き荒れJESでもライブがしづらい環境となりました。この時にJESはその歴史的使命を終えたので「店じまい」するか、あるいは形を変えて存続することを検討しました。最初に思いついたのはビデオライブを中心とした学会にすることでしたが、成功した症例の編集されたビデオを供覧することであれば通常の学会でも行われていることでしたのでJES固有の価値を見出すことができませんでした。ビデオライブでライブサージェリーに優る点は唯一合併症を供覧できることに着想し、おもわしくない結果となった反省症例、失敗症例をビデオライブ形式でファカルティーを中心とした皆様に提示していただくことで、JES特有の価値を見出そうとしました。時代とともに変遷したJESの在りようとプログラムですが、21年前にJESを立ち上げた際の2本柱は今日も生き続けています。
JESにも幾つかの大きな変化があった時がありました。コロナ騒動の2020年に、この年は緊急事態宣言などもあり社会も混乱しておりましたので緊急避難的にオンライン形式としましたが、この時、家にこもりながらJESを聞いてくれて非常に勉強になったという多くの声とオンラインの利便性に対するポジティブな声を、参加者アンケート回答から知りました。現地開催の良さはもちろんありますが、学会や研究会が乱立している状況だからこそ、基盤とサブスペとなる学会以外で多忙な医師の拘束時間を増やす事を極力避けたいと私は考えております。JESは世界中のどこからでも参加できるので、無駄に移動時間を確保する必要はありません。さらにオンライン化に合わせて土日開催を基本としましたので家族サービスや当直の合間でもログインできることが功を奏しました。必要なセッション、勉強したいセッションにダイレクトにアクセスできる利点を生かして時間の有効活用をして頂ければと思っております。
さて、今年の見どころは、是非実行委員長挨拶動画を見て頂きたいと思いますが、なんと言っても、昨年久々に復活したライブサージェリーです。今年は3例のライブを予定しております。その一つは昨年に引き続きGORE・キヤノンのTBEライブを予定しておりますが、TBEはこの夏にzone 0,1 landingへ適応拡大されるので承認後本邦初となるZone 0 landingのTBEの症例をお見せしたいと思っております。既に弓部大動脈瘤の治療においてステントグラフトの勢力図を大きく変え始めているので、まだTBEを使用していない方、経験が不十分な方は必見です。これまでのTBE治療で得た知見の全てをお伝えします。またライフラインのALTOを用いたAAA LIVEもあります。まだまだ、ALTOを使用している医師は少ないと思いますが、非常に特殊なデバイスであるALTOの使い方、Short neckに対するアドバンテージを含め魅力を漏れなく伝えます。今年はBoston Scientific Corp社のPADライブを行う事にしました。とはいえ、ほぼ毎週のように全国どこかでPAD・EVTライブが開催されていますので、他の学会と被らないように、総大腿動脈CFAの内膜摘除術+EVTというハイブリッド治療を供覧します。PAD、CLTIを治療する上では避けて通れないCFA病変を巻き込んだPAD症例を、提示する事で、CVITやJETでは難しい血管外科医らしいPADライブをお見せできると思っております。外科医にも内科医にも放射線科医にも是非、この標準かつ王道の手術を見ていただきたいです。平日の金曜日とはなりますが、午後だけで3例をお見せしますので、ぜひ仕事の手を止めて、JESにログインしていただきたいです。
翌日の土曜日朝からはこれまで通りの座学となります。今年からJESのタイトルは「JESは血管内治療の総説学会」としました。1年間、スタッフと共に手分けして全国各地の学会で発表された興味深い演題を選りすぐりましたので全ての学会に参加せずとも総説学会一つに参加すれば事足りる、と言う発想です。最近のJESでは2日間でプログラムがビッチリと入っておりますが、この2日間は、私も全力で全員の発表にコメントし、この年の血管内治療に関する知見に関して、私なりの解釈を含め皆さんにお伝えします。すなわち、この2日間で500円払いパソコンの前に座って聞いていれば、他の学会に参加しなくても網羅的に学習できる、そういう会がJESだと思っております。
まず初めのセッションは、JESの真骨頂である不成功・反省症例を皆さんに提示してもらい、「賢者は歴史に学ぶ」、他人の反省から学び、同様の事を繰り返さないようにするという考えを軸に組んでおります。人様にお見せしづらい反省症例を勇気と使命感を持って発表してくれる演者には感謝します。その勇気と使命感への敬意として、私も忖度なく批判すべき点ははっきりとご指摘させて頂きます。その他にいくつものHot Topicsを予定しております。土曜日の午前中からお昼にかけては、毎年好評で進化が続いている大動脈解離について深掘りします。今、話を聞きたいと思う演者を揃えております。そして、午後には「AAA・PRAAAの治療戦略」から「TAAAの治療戦略」へと続きます。この1年はこの領域に新たにTAMBEというデバイスが登場して大きな話題となっております。まだ見た事、触ったことのない方が多くいると思います。存分に勉強していってください。この日の最後には「JESの仲間に見せたい・教えたい小技」で、ユニークな知見を学んで頂ければと思います。日々の臨床に役立つアイデアを見つけられると思います。
最終日の日曜日は、毎年恒例の飯田修先生の末梢血管病の最新情報とランドスケープが把握できる1時間の講演で始まります。毎年申し上げている事ですが、これを視聴すれば当面の間、PAD・LEADの勉強をする必要はない、というJESの目玉プログラムの一つです。飯田先生も毎年、この発表に最も力を入れていると言っておられますので是非、お見逃しなく。続いて反省・不成功症例を挟んで、CLTIセッションを用意しました。今年のCLTIセッションでは、アボット エスプリやBio StealthTM Stent(バイオステルスステント)など次世代のデバイスが登場します。ここも是非お見逃しなく。ここまで全部お見逃しなくとなってしまいましたが、これらの必見のコンテンツを詰め合わせております。PAD治療に携わる医師は、日曜日の午前中は早起きでお願いします。そして、PADセッションの最後は血行再建不能虚血肢を前に打ち拉がれる我々にとって福音となるかもしれないアフェレーシスの最新データを紹介し、「大切断の前にレオカーナ!(Attempt Rheocarna prior to major amputation)」の真偽を問います。そして、「JESの仲間に見せたい・教えたい小技」を挟んで、JESの最後の目玉は何といっても弓部大動脈瘤に対するTEVARのシンポジウムです。慈恵医大・血管外科で開発しコツコツと行ってきたRIBS法が全国の基幹施設へと普及しはじめ、TBEも登場し大きくパラダイムシフトの予感がしています。これらの弓部大動脈瘤の最新の情報を提供します。その他、多くの企業共催セミナーを開催します。JESの企業共催セミナーは、他の学会と一線を画しており、企業の共催を得て単なる商品紹介のつまらない時間にならない様に、かなり踏み込んだ発表となっております。
今年も、昨年に引き続き3日間でライブ手術を含め延べ30時間の全セッションの術者、司会をトイレ・食事休憩もとらずに私が務めます。補足ですが、私がいくら超人と言えども、トイレには行ってます。しかし、パソコンを持ち込んで聞きながらのトイレなので、トイレ休憩ではありません。ここが大木凡人・ビビル大木との違いです。参加してくださる皆さん、そして共催してくださる企業にとって有意義な時間となるよう例年、一生懸命勤めています。このような力の入れようなので、時に手加減がない事もありますが、お行儀の良い学会と違い、本音トークで真相に迫り、スパイスとウィットをきかせて退屈させないエンタメ要素のある30時間とする事をお約束します。
参加費は今年も500円で、3日間、30時間が堪能できるワンコイン学会で、コスパ世界一は間違いないでしょう。皆さんが多く参加してくれることで、スポンサーから協賛を得ることができ、そしてそれをこのワンコインという形で還元できる訳ですので「help me to help you」の精神で多くの皆さんにJESに参加していただきたいと願っています。
コスパが高く利便性の高いオンライン形式で、皆さんのWLBを損なうことなく価値ある最新情報を外国人コンタミのない日本語で発信するJESの社会貢献と真骨頂を今年もぜひご堪能ください。

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ボリュームにご注意ください。

第21回 ジャパン エンドバスキュラー シンポジウム (JES 2026)
実行委員長 大木 隆生
東京慈恵会医科大学 外科学講座
血管外科教授
大木隆生 Takao Ohki, MD(@Ohki_TakaoMD) / X