この度は、ご多忙のところJES 2006にご参加くださりありがとうございました。
近年の心臓血管領域におけるインターベンション技術の発展には目覚しいものがあります。多くの血管病治療において、パラダイムは急速に変遷し数年前の常識が通用しなくなっています。インターベンション治療は、頚動脈、胸部・腹部大動脈、内臓動脈、腎動脈、下腿動脈など、従来の血管外科で扱っていたすべての部位・疾患に適応されております。新しいテクニックとデバイスが次々と開発され、まさに日進月歩の様相を呈しています。
これまでの医学教育は、大学医学部在籍中と研修・レジデントなどのトレーニング期間中に行われていました。虫垂炎手術、大動脈瘤手術、下肢バイパス術などのようにある程度手技や技術が成熟、また安定した分野においては、従来の医師教育システムがうまく機能していましたが、現在の血管病治療のように急速に進歩する分野においてはもっとフットワークが良く小回りのきくトレーニングシステムが望まれます。
血管インターベンションでは、カテーテルを主体とした手術道具を用いて、遠隔操作を白黒の2次元の画像情報をもとに行うという、従来の外科手術とは全く異なった知識やテクニックが要求されます。また、新しい診断、治療器具は毎月のように登場します。現在こうした新しい血管病治療のknow howを効率よく学ぶ手段は限られております。例えば、過日本邦で初めて企業製(手作りではなく)の腹部大動脈瘤用のステントグラフトが薬事承認を得ましたが、日本の多くの医師がこうしたデバイスの研修のために米国に渡っております。腹部大動脈瘤用のステントグラフトは、欧米で標準治療として定着していながら本邦ではまだ承認が得られていない医療器具のほんの一端です。頚動脈ステント、胸部大動脈瘤ステント、ワイヤーレス圧センサー、アテレクトミー、Cryoplasty、DES、Laser Atherectomy など枚挙に暇がありません。
新しいデバイスや、テクニックが開発され、日本に導入される度にこぞって米国に行くという方式には限界がありますし、言語の問題も効率のよいトレーニングの障害となりえます。イノベーションの黎明期にある血管病治療においては、今後インターベンションや新しい器具のトレーニングの需要はますます高まるものと予想されます。また、これまでは下肢ASOと腎動脈のインターベンションの知識と技術の伝播はおもに循環器内科系の学会、頚動脈ステント術は脳外科、大動脈瘤に対するステントグラフト術は心臓血管外科系の学会でなされ、血管病インターベンションのフラグメンテーションがおこっていました。JES 2006はこうした現状を踏まえ、血管病に対するインターベンションを包括し、さらに2日間の期間中は16例のライブサージェリーを中心に、“Why" もさることながら主に“How" を皆さんとともに考えることを念頭に設立されました。無論、新しい器具の安全な使用法やテクニックを習得するには2日間では不十分でしょうが、これから血管病の新しい治療を始めようという先生方にとって有意義な第一歩となることを願っております。
最後に、多大なご協力をいただいたスポンサーの皆様に厚く感謝いたします。
August 23rd, 2006
JES研究会
実行委員長
大木隆生
[ Faculty ]
会期 |
2006年 8月28日(月)・29日(火) |
主催 | Japan Endovascular Symposium研究会 |
実行委員長 | 大木 隆生 Takao Ohki,MD 東京慈恵会医科大学 血管外科 Division of Vascular and Endovascular Surgery Albert Einstein College of Medicine New York, USA |
世話人 | 古森 公浩、横井 良明、横井 宏佳、大木 隆生 |