実行委員長ご挨拶

JES開催10回目を迎えて

2006年から連続開催のJapan Endovascular Symposium(JES)は、おかげさまで今年で節目の10回目を迎えることができました。皆さまのご支援に心より感謝します。この10年間を振り返ってみますと、参加者数は年々増加しましたが、ライブの運営は残念ながら必ずしも順風満帆ではありませんでした。日本心臓血管外科学会のライブサージェリーガイドラインを遵守し適切なライブ運営を行ってきましたが、2012年の第7回JESにおいて死亡事例が起きてしまいました。

学内調査委員会と3学会による調査委員会が立ち上がりましたが、翌2013年JESまでに結論が出なかったため、第8、9回JESではライブを中止し、ビデオライブ中心の会とせざるを得なくなりました。そして第10回となるJES2015は、2014年に日本心臓血管外科学会を始めとする3学会のライブサージェリーに関する新ガイドラインが公表されていたためライブを施行する環境は整ったのですが、私と慈恵医大を取り巻く様々な環境から今しばらくライブを自粛したほうが良いとの判断に至りました。第7回JES以来久しぶりのライブサージェリーを心待ちにしてくださっていた皆様には申し訳なく思います。

しかしながら、これらの出来事はJESの開催意義・存在意義を見つめなおす良い機会となりました。ライブサージェリーならではの教育効果がある事は否定できませんが、血管内治療を学び、討議する手段は、ライブに限ったわけではありません。実際、ライブサージェリーの無いJESを過去2回開催しましたが、全国の施設からの不成功・反省症例を募ったセッションは参加者アンケートでも高いご評価をいただきましたし、参加人数も例年通り1,000名を越えました。今年も、ファカルティー施設を含め、全国から大成功・反省・不成功の症例を49演題もご登録頂き、症例検討に関するセッションが4つになりました。また、ライブではありませんが、ビデオにより様々な血管病治療をじっくり供覧頂きます。さらに、教育セッション「CTO突破のコツ」、「TEVAR/EVARのPitfall」を通じて、最新のテクニックを供覧頂きます。Debate Sessionでは、循環器内科vs血管外科で「無症候性PADに対する侵襲的治療」、「EVTは循環器内科の仕事か?」について、徹底討論を行います。今回の新たな試みとしてアナライザーを導入しました。参加の皆さんの投票により、ベスト症例発表やディベートの勝敗を決したいと思います。これまでの採点は壇上のコメンテータ―が行っていましたが、アナライザーを使って頂くことで「参加型のJES」を目指し皆さんと最善の治療方法についてとことん議論し、今後の診療に役立てて頂きたいです。今年も参加してよかった、と一人でも多くの方に思って頂けるような会を、皆さんと一緒につくれたら、と願っています。

そして2日間のプログラムの最後のセッションで、JESは歴史的使命を終えたのか、あるいは、新たな使命が待ち受けているのか、今一度考えてみたいと思います。

「晩夏の風物詩」となったJES ― 多数のご参加をお待ちしております。

JES2015 実行委員会 実行委員長

大木 隆生

東京慈恵会医科大学 外科学講座
統括責任者・血管外科教授
(高知県観光特使)